消女ラプラス
コツコツ……

静まり返った廊下を歩きながら僕は物思いに耽る。

二千三十一年。

『未来視の神』である『ラプラス』が支配するこの世界で、僕は『魔女』という体質を持って生まれた。

何も魔法が使えるわけじゃない――むしろその逆だ。

テストは常にビリ。人間関係も上手くいかず、その上とにかく運が悪い。

言うなれば生まれながらにして不幸の塊、RPGで言うと常に『呪い』状態にかかっている様なものだ。

その原因は全て『ラプラス』というこの日本を統治する『神様』のせいだ。

この世界には『因果率』というパラメータが存在する。

神様である『ラプラス』の『お告げ』通りに行動すれば上昇し、逆らえば低下する。

普通の人間なら『ラプラス』に逆らわない限り『因果率』が下がることはない。

ところが僕は生まれつきこの『因果率』が上がらない体質で、まさに『呪われている』のだ。

『因果率』が低いということは『神様』の作ったシステムに従っていないということだから、当然様々な弊害が発生する。

『テストの点数が悪い』『人間関係が上手くいかない』『運が悪い』というのも、神様の未来予知カリキュラム通りに僕が行動しない弊害だ。

他にも僕の様な『魔女』にはいくつかのペナルティが課せられる。具体的には、


・『因果率』が低い者は『神様』に逆らう犯罪者予備軍とされ、警察のブラックリストに載る。

・定期的な尋問や進学する高校の指定、東京二十三区外への行動の制限等、多くの自由を奪われる。

・就職先を選ぶことが出来ず、高校卒業後は『魔女』専用の特別収容施設で囚人と同様の扱いを受ける。


聞いただけでお先真っ暗、最初から人生ゲームオーバー。



有体に言えば、僕は最初から『神様』に見捨てられた存在だった。
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