消女ラプラス
ボディーガード達を半ば強引に退却させた私は、『ソロモン・リング』を人差し指に嵌めた。

眩い光が放たれると同時に全身の力がみなぎり、私は過去の呼吸と感覚を取り戻す。

由緒正しき時雨家では代々、後継ぎには様々な処世術が叩き込まれてきた。

そこにはいざという時、『ソロモン・リング』で自分の身を守ることの出来る護身術も含まれていた。

だが『ソロモン・リング』は本来国家指定特殊兵器だ。所持していることがバレれば処罰は免れず、普段は時雨家の武器庫に厳重に保管されている。

故に普段は持ち歩くことは出来ず、以前歌姫に襲われた時は夕立始に助けてもらう羽目になった。

だがそれが今では大きなアドバンテージとなっている。

夕立始と『神様』は私が『指輪使い』であることを知らない。

きっと、私がただの非力な女子高生だと思っていることだろう。だから私が現れても彼らは警戒出来ない。

私はライプラリを取り出すと、画面に監視カメラの映像を映し出す。

時雨邸に一人、ハッキングを得意とする配下を残してきた。万が一狙撃が失敗して逃げられた場合でも、カメラをハックして追跡出来るよう予め手配してある。

もう絶対に『ラプラス』を逃がす気はない。今夜こそ『神殺し』を実行し、私は運命を変えてみせる。



私はリングから溢れ出した青の輝きに全身を包み込むと、カメラが捉えたターゲットの方角へ向けて弾丸の様に跳躍した。
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