消女ラプラス
「……ああやっぱり我慢できなかったよ。つまみ食いは最低のマナー違反だというのに」

俺は舌なめずりをしつつ眼下の光景を見下ろした。

俺の体は普通ではない。だから、この地上千五日四十メートルの高さからでも地上での戦いの様子がはっきりと分かる。

時雨鏡花が歌姫に叩きのめされるのも確認した。決着が着くのも時間の問題だろう。

無論、あの歌姫は普通の個体ではない。

対天使用に作らせた特別製であり、だからこそ時雨鏡花も油断し命を落とす羽目になった。

しかしここで時雨鏡花を摘み取ってしまったのはやはり愚策だった。

当初の予定では彼女は『神様陣営』にぶつけるつもりだったのだから。

仕方ない……オードブルの時間は終わりだ。

この特別製の歌姫を『神様陣営』にぶつける。もし夕立始が時雨鏡花の様に『天使』の力を過信していれば、成すすべもなく倒されて終わりだ。

油断していなかったにしても彼はほとんど訓練を受けてないに等しい、プラズマブレードさえ作り出せない少年だ。高性能の殺戮兵器AIの相手が務まるはずがない。

……と、普通ならそうなるはずだが彼は決して『普通』などではない。

きっと今回も、俺の想像を超える何を見せて存分に楽しませてくれるはずだ。



「さて、そろそろメインディッシュと行こうか」
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