消女ラプラス
「……来たッ!」
頭上から降ってきた五体の歌姫を前に僕は叫び、素早くラプラスの前に出た。
意識を集中させると同時に『ソロモン・リング』が起動し、青い光が僕の全身を包み込んでいく。
運動神経が研ぎ澄まされ、徐々に筋力が増強されていく感じがする。
「ラプラス、準備完了だ」
「分かった」
ラプラスは頷くと、耳元のイヤモニに手を当てて叫んだ。
「コンセプション・リンク!」
途端、自分の中に別の何かが入ってくる感覚と共に両手から青い刀身が現れた。
バチバチと光る電気の膜で覆われた手でそれを掴み、僕の足は無意識に歌姫の前に進み出る。
「凄い……あんなに苦労しても出せなかったブレードが一瞬で……!」
「私は実験で何度か終とリンクしたことがあるから、ブレードの出し方が分かるの」
「なるほど。それで僕はどうすればいい?」
「何もしなくていい」
ラプラスの声が、ガラリと氷の様に冷たくなった。
振り向くことが出来ないので表情は分からないが、彼女の歌姫に対する積年の想いと怒りがひしひしと伝わってくる。
きっと、いや間違いなくラプラスだって誰も殺したくなかった。
だがその想いは委員会に容易く踏みにじられ、歌姫という忌まわしい暴力となって全てを闇に葬り去る。
彼女にとって今、自分の力を乱用してきたその闇の化身に怒りをぶつける絶好の機会なのだ。
「待ってて……一瞬で終わらせるから」
「終わらせるって……うわっ!」
彼女の声を合図に、僕の体は真っすぐに歌姫たちに漸近していく。
その数は五体。訓練で倒した歌姫の数より多い。
「ちょっと! 気持ちは分かるけど僕の体だからって乱暴に扱うなよ!」
「いいから黙ってて!」
前方の二体から触手が飛んでくる。僕の剣はそれを容易く弾き返すと、まず右手の歌姫に切りかかる。
二発目の触手もまるで自分の体でないかの様な動きで軽やかによけ、その顔面に剣を振り下ろす。
歌姫の顔が哀切な叫びと共に切り裂かれ、僕の全身に返り血が飛び散った。
「おい⁉ 最近クリーニングしたばかりのブレザーが!」
「次!」
後ろから飛んできた触手を、今度は爆宙で強制的に回避させられる。
そのまま触手の上に着地し、僕(の皮を被った狂戦士ラプラス)は二体目の顔面も真っ二つにした。
「ねえ顔面を切らないと気が済まないの⁉ クリーニングでどうこう出来るレベルじゃないぞ」
「顔が弱点なのよ! 制服くらい、戦いが終わったら後でいくらでも用意してあげるから」
その時、僕は残りの三体の異変に気付いた。
どうやら僕らの行動パターンを見て学習したらしく、お互いの顔面を触手で覆いながら迫ってくる。
「あれはどうする気なの?」
「歌姫は基本的に『システム』の予測を元にしか行動出来ない脳ナシだけど、一応学習能力はある。こうなることは分かっていた」
同時に、僕の右手が勝手に持ち上がる。
「な、何をする気?」
「『ソロモン・リング』は本来、電気を素体にして生成されるプラズマを使役して戦う兵器。だけどね、逆を言えばプラズマではなく電気そのものを使って戦うことも出来るの」
「まさか……」
瞬間、僕の右手から巨大なスパークが発生して三体の歌姫を包み込んだ。
「キュオオオオッ!」
激しい青の雷に全身を焼かれ、よろめいた歌姫たちがバラバラになる。
と、同時に僕の体もその三体目掛けて突進していく。
「ちょ、ちょっと待て。そいつらも全員顔面を削ぎ落とす気じゃ……!」
すると、ラプラスの無慈悲な声が後ろから響いた。
「ちょっと静かにして。……そいつらの顔面を正確に削ぎ落としたいから」
「僕の役目って完全に汚れ仕事じゃないかぁ!」
数分後。
歌姫を討滅し終えて全身血まみれで戻った僕に謝りつつも、彼女は決して近寄ろうとしなかった。
頭上から降ってきた五体の歌姫を前に僕は叫び、素早くラプラスの前に出た。
意識を集中させると同時に『ソロモン・リング』が起動し、青い光が僕の全身を包み込んでいく。
運動神経が研ぎ澄まされ、徐々に筋力が増強されていく感じがする。
「ラプラス、準備完了だ」
「分かった」
ラプラスは頷くと、耳元のイヤモニに手を当てて叫んだ。
「コンセプション・リンク!」
途端、自分の中に別の何かが入ってくる感覚と共に両手から青い刀身が現れた。
バチバチと光る電気の膜で覆われた手でそれを掴み、僕の足は無意識に歌姫の前に進み出る。
「凄い……あんなに苦労しても出せなかったブレードが一瞬で……!」
「私は実験で何度か終とリンクしたことがあるから、ブレードの出し方が分かるの」
「なるほど。それで僕はどうすればいい?」
「何もしなくていい」
ラプラスの声が、ガラリと氷の様に冷たくなった。
振り向くことが出来ないので表情は分からないが、彼女の歌姫に対する積年の想いと怒りがひしひしと伝わってくる。
きっと、いや間違いなくラプラスだって誰も殺したくなかった。
だがその想いは委員会に容易く踏みにじられ、歌姫という忌まわしい暴力となって全てを闇に葬り去る。
彼女にとって今、自分の力を乱用してきたその闇の化身に怒りをぶつける絶好の機会なのだ。
「待ってて……一瞬で終わらせるから」
「終わらせるって……うわっ!」
彼女の声を合図に、僕の体は真っすぐに歌姫たちに漸近していく。
その数は五体。訓練で倒した歌姫の数より多い。
「ちょっと! 気持ちは分かるけど僕の体だからって乱暴に扱うなよ!」
「いいから黙ってて!」
前方の二体から触手が飛んでくる。僕の剣はそれを容易く弾き返すと、まず右手の歌姫に切りかかる。
二発目の触手もまるで自分の体でないかの様な動きで軽やかによけ、その顔面に剣を振り下ろす。
歌姫の顔が哀切な叫びと共に切り裂かれ、僕の全身に返り血が飛び散った。
「おい⁉ 最近クリーニングしたばかりのブレザーが!」
「次!」
後ろから飛んできた触手を、今度は爆宙で強制的に回避させられる。
そのまま触手の上に着地し、僕(の皮を被った狂戦士ラプラス)は二体目の顔面も真っ二つにした。
「ねえ顔面を切らないと気が済まないの⁉ クリーニングでどうこう出来るレベルじゃないぞ」
「顔が弱点なのよ! 制服くらい、戦いが終わったら後でいくらでも用意してあげるから」
その時、僕は残りの三体の異変に気付いた。
どうやら僕らの行動パターンを見て学習したらしく、お互いの顔面を触手で覆いながら迫ってくる。
「あれはどうする気なの?」
「歌姫は基本的に『システム』の予測を元にしか行動出来ない脳ナシだけど、一応学習能力はある。こうなることは分かっていた」
同時に、僕の右手が勝手に持ち上がる。
「な、何をする気?」
「『ソロモン・リング』は本来、電気を素体にして生成されるプラズマを使役して戦う兵器。だけどね、逆を言えばプラズマではなく電気そのものを使って戦うことも出来るの」
「まさか……」
瞬間、僕の右手から巨大なスパークが発生して三体の歌姫を包み込んだ。
「キュオオオオッ!」
激しい青の雷に全身を焼かれ、よろめいた歌姫たちがバラバラになる。
と、同時に僕の体もその三体目掛けて突進していく。
「ちょ、ちょっと待て。そいつらも全員顔面を削ぎ落とす気じゃ……!」
すると、ラプラスの無慈悲な声が後ろから響いた。
「ちょっと静かにして。……そいつらの顔面を正確に削ぎ落としたいから」
「僕の役目って完全に汚れ仕事じゃないかぁ!」
数分後。
歌姫を討滅し終えて全身血まみれで戻った僕に謝りつつも、彼女は決して近寄ろうとしなかった。