アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
突然の誘いに吹雪は驚き、思わず後退りしてしまう。声を掛けてきたのは単なるナンパだったのだろう。ホストクラブの人だと思って話しを聞いてみたものの違うようだ。
「あの、私……ホストクラブに行きたいので………」
「甘い体験したいんでしょ?だったら俺に教えて欲しいんだ」
「何を、ですか?」
「甘いこと」
目の前の彼の言葉とそして視線がとても色気を帯びていて、吹雪はついドキッと胸が高鳴ってしまった。それぐらい、その男の表情は甘い挑発のようだった。
「…………」
「返事がないって事は少しは迷っているんだよね」
「それは………」
「よし!じゃあ、行こうか」
そう言って吹雪の手を取って、さっさと何処かに連れていこうとする男だったが、さすがの吹雪も抵抗せずに行けるわけもなかった。
その手を強くひいて、それを拒否した。
「離してくださいっ!私はまだ行くと言ってないですし………甘いことって何ですか?全くわからないんですけど……」
「あ………ごめん。気軽に触ったりして。………話したいのは本当なんだ。お姉さんにもメリットはある事だよ」
「そんな事言われても全くわからないです」
「…………後で、詳しく話すつもりだったけどな」
困った顔で微笑み、鼻の頭を指でさすりながら、吹雪を見た。その仕草が少し幼く見えてしまう。けれど、吹雪を無理矢理に連れていこうとしたのは事実なのだ。警戒心を持ち。強い視線のまま彼の言葉を待った。
申し訳なさそうに吹雪の手を離した後、彼は恥ずかしそうに言葉を続けた。