アラサー女子は甘い言葉に騙されたい





 いつもと同じ言葉。
 それを相手に伝えながら、視線を上に向ける。
 そこには、ずっと会いたかった彼の姿があった。


 「周くん………」
 

 周はまっすぐに吹雪を見つめ、そして少し緊張した様子ではにかみながら、吹雪が差し出した本を受け取った。


 「吹雪さんに、これを」


 そう言って差し出してきたのは、小振りの白い封筒だった。吹雪は、カウンターに置かれた封筒よりも、彼を見つめてしまう。
 ずっと会いたかった彼は、いつもと変わらない優しい笑みのままだった。だが、少し痩せただろうか、余計にほっそりと印象を持った。

 周は自分に会いに来てくれた。
 それが嬉しいはずなのに、上手く声が出ない。ただただ、悲しげに彼を見ることしか出来ないのだ。


 「待ってます。俺、吹雪さんが来てくれるのをずっと待ってますから」


 強い意思のある口調で、吹雪に告げた後、周は本を受け取って、図書館から出ていってしまった。
 突然の事に驚きながらも、吹雪は彼の背中が見えなくなるまで、周を見つめていた。

 カウンターに残されたのは、小さな封筒。
 吹雪はゆっくりとそれを手に取った。



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