アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
「…………私は、ずっと周くんに会いたかったよ」
「ぇ…………」
「周くんがどうして私に声をかけてくれたり、あのギャラリーにつれていって行ってくれたのか、わからない。けど………私は、あなたに会えなくて寂しかったの。会いたくて仕方がなかった」
「吹雪さん………」
吹雪は自分の頬に温かさを感じ、その時初めて自分が泣いているのに気づいた。
泣くつもりはなかった。
けれど、気持ちが膨れ上がり、彼を見た瞬間に会いたいが涙に変わったのだろう。
吹雪は、涙を拭くこともせずに、言葉を紡ぎ続けた。
「………だから、周くんが図書館に来てくれたのとっても嬉しかったの。おしまいじゃないってわかったから………。ずっとずっとあなたが来るのを待ってたの。………私、周くんの事が………」
早く彼にこの気持ちを伝えたい。
終わりになったとしても、彼の思いが自分とは違うものだとしても。
そう思ったはずなのに、その言葉は全身が温かいものに包まれた事で止まってしまった。
「………その続きはまだ言わないで」
耳元で周の言葉が聞こえる。
周に抱きしめられている、とそこでやっと気づいたのだ。
吹雪の事を抱き彼の腕や手は、まるですぐに割れてしまう陶器に触れるように優しいものだった。