アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
恋人になれたと確認する甘いキス。
その行為を周は何度か繰り返した。その間に、互いのクスクスと笑う声を聞こえる。
そんな幸せな時間を、彼の夢だった空間で過ごせるのが吹雪にとっても夢のような時間だった。
「これから、よろしく」
「こちらこそ、よろしくね。周くん」
そうやって2人でソファに座り、キスの余韻に浸っている時だった。
「あのー………お取り込み中のところ申し訳ないんだけど……カフェに来たお客さんが君のギャラリーを見たいと言ってるんだけど、いいかな?」
そう声を掛けてきたのはギャラリーからドアで繋がっているカフェの店員さんだった。
吹雪はハッとし、真っ赤になりながら俯いてしまったけれど、周はそれを見て微笑みながら、頭をポンポンッと撫でてくれた。
「あー………今回は一般公開してないんです」
「周くん!せっかくのチャンスなんだよ?見てもらおう?」
周は吹雪のためにギャラリーを開催してくれた。自分だけの特別というのはとても嬉しい。けれど、周の作品に興味を持ってくれるのもとても嬉しいのだ。
吹雪は、周の言葉を遮りながら、そう伝える。すると、周は優しく微笑み返し、「そうだね」と言うと、カフェの店員さんに「ぜひ、見て欲しいです」と返事をした。
周はその後も少しずつ来客が訪れるギャラリーで、自分の作品を楽しそうに紹介していた。
そんな姿を見つめながら、吹雪は幸せな余韻に浸って、彼と蒼い食器をいつまでも眺めていた。