アラサー女子は甘い言葉に騙されたい




 「ん………あ、吹雪さんだ………おはよう……」
 「おはよう、周くん」


 ボーッとした眼差しで目を覚ました周。吹雪が抱きついた事で起きてしまったようだった。


 「ごめんなさい。起こしてしまって………」
 「ううん。…………吹雪さんが俺のうちにいる。夢じゃなかったんだ」


 そう言うと、周はニッコリと笑った。
 その子どものような純粋な笑みに、吹雪は「可愛い」と心の中で悶えてしまう。それぐらいに彼の笑顔はキラキラしていた。
 言葉につまった吹雪を見て、「どうしたの?」と、不思議そうな表情で見つめる周だったが、吹雪は「なんでもないよ」と誤魔化すしか出来なかった。


 「吹雪さん、もう起きる時間?」
 「まだ、大丈夫だよ」
 「やった!じゃあ、もう少しくっついてよー」


 そう言って周は吹雪を布団の中で抱き寄せる。肌と肌が触れ合う感覚で、昨夜の事を思い出してしまうけれど、吹雪は彼の腕の中でじっとしていた。こうやってまた抱きしめて貰いたかったのだ。起きた瞬間にその願いさえ叶えてくれる周に感謝をした。


 「昨日さ……その………終わった後吹雪さんすぐに寝ちゃったから……洋服とか着せれなかったんだけど。寒くなかった?」
 「ご、ごめん………。でも、周くんと一緒だったから温かかったよ」
 「そっか。なら、よかった。じゃあ、もう少し温まろー」
 「わっ!!そんなに強くしたら苦しいよっ!」
 「こうしたいだよ」
 「もうー!」


 抱きしめあって、キスをして。
 くっつき合う朝のやり取り。そんな些細な事が幸せで。もう少しでベットから降りなければいけないけれど、ギリギリまで吹雪と周は2人だけの時間を満喫した。


 



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