アラサー女子は甘い言葉に騙されたい




 「わぁー……昨日は気づかなかったけど、周くんの家にはやっぱり沢山の食器があるんだね」


 吹雪は、急いでシャワーを浴びて仕事前に1度家に戻る準備をした後に、周が作ってくれたおにぎりを食べながら、キョロキョロの部屋の中を見渡した。
 キッチンのはもちろん、机や本棚、テレビ台にも食器が並べられている。どれも綺麗な青色をしており、吹雪は好きな物に囲まれて心が弾んだ。そんな吹雪の様子を見て、周も嬉しそうに笑みを浮かべる。


 「これは全部俺の試作品だよ」
 「これが試作品!?とっても素敵なのに………ギャラリーみたいにずっと見てられるよ」
 「ならいつでも来て。それに、ギャラリーとは違って、ここではそれを使ってご飯も食べれるんだから」
 「確かにそうだね!ギャラリーより素敵だ!」
 「そんなに嬉しそうに言われると………照れるな」


 周は恥ずかしそうに笑いながらも、とても嬉しそうにしているのが吹雪にはわかった。


 「吹雪さん。金継ぎって知ってる?」
 「えっと……割れてしまった食器を直す技法だよね?」
 「うん。陶器が割れたりヒビが入ってしまった時にその部分に漆で接着して、金などで装飾する事なんだ」
 「大切なものが割れてしまっても、新しい形になってまた使えるのはいいよね」


 突然話題が変わり、吹雪は不思議に思いながらもそう言うと、周をその返事を聞き「そうだね」と満足そうに頷いた。



< 127 / 132 >

この作品をシェア

pagetop