アラサー女子は甘い言葉に騙されたい



 「ん?どうしたの?」
 「何でもないです。……それで、話しておきたい事って」
 「吹雪さんって俺より年上だよね?」
 「えぇ………28歳ですけど」
 「俺は23歳。だからさ、俺に敬語使わないでいいよ。もし、俺が敬語の方がいいならそうするし」
 「それは大丈夫ですけど……初めて会った人には敬語になっちゃって………」
 「恋人みたいな関係になりたくてホストに行ったんでしょ?だったら、敬語より普通に話した方がいいと思うんだ」


 周の話していることは理解出来る。
 敬語よりも普通に話した方が打ち解けやすいだろう。だが、すぐに敬語を止められるだろうか、と思ってしまう。今でもまだ緊張しているのだ。更にハードルが上がった気がしてしまう。
 吹雪が返事に止まっていると、周はまた話しを続けてしまう。


 「あ、それと俺の事も名前で呼んで欲しいな。まだ、名前呼ばれたことないと思うし」
 「名前………」
 「そうそう。あ、周さんはダメだからね」
 「う………」


 自分が言おうとしていた呼び方を先にダメと言われてしまい、吹雪は言葉を詰まらせてしまう。「俺は吹雪さんって呼んでるけど年上だし、お客様だからねー」と言いながら、期待した顔で周は吹雪の言葉を待っていた。
 そのキラキラとした瞳で見つめられて、吹雪は恐る恐る彼の名前を呼んだ。



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