アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
7話「変化する気持ち」
7話「変化する気持ち」
周に抱きしめられ泣いていると、少しずつ思い出した悲しみが薄れてきた。もう大丈夫だと思えるから不思議だ。
しかし、自分より年下でしかも異性の胸を借りて泣いてしまった事に、吹雪は気恥ずかしさを覚えてしまう。
けれど、そんな風に思っても後の祭りだ。今でも、周は優しく頭を撫でながら抱きしめてくれている。本当にどちらが年下なのかわからないなと思った。
「あ、あの………周くん……」
「ん?」
「もう、大丈夫だから………そのありがとう」
吹雪は恥ずかしがりながら彼の体から離れる。すると、温もりがすぐに冷めてしまい、寂しさを感じてしまった。けれど、そんな事を言えるはずもなく、吹雪は苦い表情のまま彼を見た。
「ごめんね……年上なのに、泣いちゃって………」
「俺が泣かせたかったから」
「え?」
「吹雪さんは泣いた方がすっきりするんじゃないかと思ったから……だから、俺が泣かせたんだよ。ごめんね、吹雪さん」
周はごく自然のそう言って小さく頭を下げた。
そんな事など吹雪が思うはずもないし、彼は話しを聞いて慰めてくれた。「それは違うよ」と言ってしまうのは簡単だけれど、その言葉は彼の優しさからくるものだ。それを無下には出来ない。それに、吹雪は気恥ずかしさよりも、嬉しさが勝って思わず微笑んでしまった。