アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
周と出会ってから、吹雪の生活は一変した。
仕事に行って、家事をして好きな本を読んで1日を終える。それは変わらない事かもしれない。
けれど、その中に突如として現れた年下の周。次に会った時はどんな言葉を言われるのか。どんな事をするのだろうか。彼の事を考える時間が増えてきたのだ。
しかし、その度にドキドキしては、現実を思い出す。
彼の言葉は仮初めのもの。女の子をドキドキさせる言葉を彼は選んでいるのだ。
ホストの練習台になる。吹雪は、甘い言葉を代償に貰う事でそれを引き受けたのだ。
その事実を思うと、吹雪はため息が漏れてしまうのだった。
「次、会える日は吹雪さんも俺も休みの日なので、デート行こう、ね?」
「え………」
彼の言葉と笑顔に、吹雪は驚きそして思わず頬が緩んでしまう。
デートというのは、恋人や夫婦、そして付き合う前の想い人とするものだろう。吹雪はそう思っていた。それだけに、そのデートという言葉で、彼の気持ちが気になってしまった。
「あれ……ダメかな?」
吹雪、驚き返事に困っていると周は残念そうな表情を見せた。子犬が何かをねだるような顔をする周に、吹雪は弱かった。
けれど、それを我慢して吹雪は彼に理由を聞くことに決めた。