アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
「吹雪さん、その器、気に入ったの?」
「え、あ………ごめん。アイス溶けちゃうよね………」
そう言って木製のスプーンで抹茶アイスを口に運んだ。おいしさに思わず頬が緩んでしまう。そんな吹雪を見て、周は微笑みながらまた同じ事を聞いてきた。
「吹雪さんは料理も好きだから、食器も好きだったりするの?」
「ん……まぁ、気になるかな。特に、この蒼い食器は好きかも。こう言う青色の食器はついつい集めたくなっちゃうんだよね」
そう言って、吹雪は食べかけの餡蜜を見つめた。この食器はとても気に入ってしまった。どこで買えるのかお店の人に聞きたいぐらいだった。欲しいものが見つかった時の高揚感のままに目を輝かせて器を見てしまうと、目の前の彼がクスクス笑いながらこちらを見つめていた。
「あ………ごめんね。変だよね、美味しいものよりも食器に目がいっちゃうなんて」
「ううん。そんな事ない」
周はそう言うと、肘をついて手の上に顎先を乗せながら優しく微笑んだ。