アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
「ここの店がお気に入りなのは、食べ物がおいしいってのもあるけど……俺も使ってる食器が好きなんだ」
「そう、なの……?」
「男で陶器が好きなんてあんまりいないだろうから言いにくかったけど。吹雪さんが同じようにここの食器を気に入ってくれて嬉しいんだ」
そう言いながら、周は自分が食べているわらび餅が入った皿を見つめる。そこにも蒼い色が見えた。
「今度、おすすめの食器屋さん教えるね」
「うん、楽しみにしてる」
その後も共通の話題で盛り上がり、あっという間に時間は過ぎていったのだった。
吹雪もなかなか器の話が出来る人がいなかったので、周と話せた事が嬉しかった。
このお店の食事代は周が全て出してくれた。
年上であるし、お金を貯めたいと聞いていたので、自分の分だけでも出させて欲しいと吹雪はお願いしたが、彼は譲ってはくれなかった。
会計を終えた周に「ご馳走さまでした」とお礼を述べると、周は持っていた紙袋を吹雪に差し出した。
「はい。吹雪さんにプレゼント」
「え………プレゼント?」
「そう。いつも練習に付き合ってくれてるからお礼をかねてね」
「そんな…………私は周くんの条件にのっただけだし」
「いいからいいから」