アラサー女子は甘い言葉に騙されたい



 自分より年下の彼。
 ただの図書館司書とホスト見習いの不思議な彼。
 ホストの女性客てしての練習相手という奇妙な関係。彼が自分を恋愛対象に見ていないのは明白だった。

 もう恋愛をして傷つきたくはない。昔の胸の奥の傷口がズキンッと痛むのがわかる。
 自分から告白する事も出来ない。

 きっと、この恋は淡く儚いもので彼に気持ちを伝えられずに終わるのだろう。
 そう思い、吹雪は小さくため息をつきながら目を閉じた。そうすれば、涙はこぼれなくなる。その思いで、切ない気持ちが収まり落ち着くまで目を瞑り続けた。







 それからも言うもの、周は吹雪とデートをしながら練習したいと言う事が多くなった。吹雪にプレゼントを買ってくれたカフェや、陶器を売っている小さなお店に案内してくれた事もあり、周が吹雪を喜ばせようといろいろ調べてくれているようだった。
 周が自分の事を考えてくれいるのが嬉しかったし、彼と手を繋げる事が出来るデートは吹雪にとって幸せな時間だった。仮初めだとしても、恋人のように過ごせる。まさに、ホストとそのお客さんという関係そのものだった。




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