アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
「俺は吹雪さんの恋人です。幼馴染みだか何だか知らないけど、吹雪さんが嫌だってるので、今は帰って貰えますか?」
「あ、周くん?!」
「へー………やっぱり彼氏だったんだ。幼馴染みだから仲良くしてただけで、こいつみたいな暗い奴はお断りだからいいけど」
「………だったら何で声掛けてきたんですか?」
「おまえに忠告してやるためだよ。めんどくさい女だって」
「………そうですか。では、もう話しは終わりですよね。失礼します。………いこう、吹雪さん」
「う、うん………」
吹雪は戸惑いながら、周が歩き出した後ろについていく。後ろを振り向くと、ニヤニヤと笑みを浮かべながら吹雪達を見つめる星と目が合ってしまう。ハッとして、すぐに前を向くけれど、しばらくの間、星の表情と言葉が頭から離れなかった。
「………吹雪さん、」
「…………」
「吹雪さん?」
「え、あ………周くん……」
無心のまま歩いていたようで、すっかり辺りは夜になり、気づくと吹雪の家の最寄り駅まで来ていた。