アラサー女子は甘い言葉に騙されたい



 そんな吹雪を近所に住んでいる幼馴染みである桜堂星は「本当に本が好きだねー」と笑っていた。記憶がある頃から彼の一緒に過ごしていた相手。中学も高校も同じだったので、登校する時は一緒だった。彼はサッカー部に入部しており、中学高校と司令塔として活躍していた。顔も整っており、気さくな性格から男女からも人気だった。吹雪とは違う、本当の人気者。クラスのリーダーに相応しい人だった。
 だからこそ、クラス委員を2人でやる事が多くなっていた。幼馴染みという事もあってか、吹雪には優しく、そして女の子扱いもしてくれる優しい幼馴染みだった。



 「これ、おまえの好きな作家の本だろ?本屋で新刊出てたぞ。しかも、レア物!サイン本だ!」
 「え、本当?!」
 「店で最後の1冊だったから買っておいた」


 高校2年の頃だった。
 いつものように朝に家の前で会い、星と共に学校に向かう。その時に、彼が吹雪のお気に入りの作家の本を本屋で見つけて買ってきてくれたのだ。しかも、サイン入りだというから驚きだった。


 「ありがとうー!星………本当に嬉しい」
 「本のプレゼントが、そんなに顔がニヤけるぐらい嬉しいか?」
 「うん!とっても!」


 そう言って、吹雪は満面の笑みで星から本を受け取った。袋から出してみると、確かに本には透明のカラーがかけられており、「サイン本」と書かれた紙が貼られてた。



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