アラサー女子は甘い言葉に騙されたい



 「どんなサインだろー?あ、手袋してから開けた方がいいかな?それとも飾っておくべき?」
 「………いや、読んだ方がいいだろ」


 それをキラキラした瞳でそれを見つめた吹雪だったが、ある事を思い出してハッとする。



 「ごめん。夢中になってたけど、お金渡すの忘れてた」


 慌ててバックから財布を取り出そうとする吹雪だが、星はそれを止めた。


 「いいよ」
 「え、でも……」
 「おまえのめっちゃ笑った顔、久しぶりに見れたから、それでいい」
 「………何それ……」


 なんてキザな事を言うようになったのだろう。その時はそう思った。けれど、しばらくしてその言葉を思い出しては顔を真っ赤にしてしまった。
 この瞬間に、吹雪は星が好きになったのだろう。恋に落ちるとはこういう気持ちなのだな、と吹雪はその時初めてその感覚を知った。
 好きなったとしてと、吹雪は彼との関係を変えようとはしなかった。今のままが幸せだと感じていた。幼馴染みとしてならずっと関係は続いていく。1度告白をしてしまい、恋人になれなかったら。なれたとしても、別れてしまったら。星との関係がぎくしゃくしたものになってしまう。そう考えたのだ。


 けれど、事態は彼の一言で変わった。




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