アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
そう言って、瞳に触れる彼の手を少し冷たく気持ちよかった。
彼の手に触れられた目は自然と閉じてしまう。
すると、突然体が浮いた。
「えっ………ちょっと、周くんっ!?」
「決めた」
「お、降ろしてよ、周くん………!!」
突然、周は吹雪の事を抱き上げたのだ。
驚いた吹雪は彼にしがみつき、彼の顔を見上げた。すると、吹雪は笑顔で吹雪を見つめた。
「悲しい時は寝るのが1番!でも、吹雪さんを1人には出来ないから、俺が一緒に寝るよ」
「ね、寝るって………もしかして、泊まるの?!」
「うん。でも、大丈夫。よしよしとか抱きしめるだけで、何もしないから。はい、寝てねてー!」
「ちょっと、周くん!?」
隣の部屋の寝室のドアを開けて、ヅカヅカと歩き始めた周は、そのままベットに近づいて吹雪をベットに下ろした。
そして、驚く吹雪をよそに自分も同じベットに横になり、そして吹雪の手を握りしめた。
「俺が隣にいるから。安心して寝てね」
「あ、安心って突然そんなことを言われても………」
「おしゃべりはおしまい!おやすみなさい」
そういうと、隣の部屋の明かりがうっすらと見える薄暗い部屋で、周が目を閉じた。
本当に泊まっていくようだ。
吹雪は戸惑い、焦りながら彼の顔をジッと見つめた。けれど、彼は目を開ける事もなく本当に寝てしまうようだった。
突然の事に驚き、どうしていいのかわからない。
けれど、一人になりたくない。周の傍にいたい。その気持ちは確かなものだった。
恋人でもない彼と一緒に眠る事が本当にいいことなのかはわからない。
けれど、手を繋いで横になる事がとても安心するのだと吹雪は初めて知ることが出来た。
一人じゃない。
好きな人が居てくれる。
それだけで、もう涙は出てこなくなったのだ。
吹雪はもう何も考えずに、周が与えてくれたこの幸せな時間に甘えよう。
そう思うと、すぐにまた瞼が重くなっていき、あっという間にまた眠りについたのだった。
きっと、今日の夢には彼が出てくるのだろう。そう、吹雪は確信していた。