アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
☆☆☆
これは夢の続きだろうか?
目が覚めると、自分が好きだと気づいた愛しい彼が目の前で寝ているのだ。
夢の内容は起きた瞬間に忘れてしまった。けれど、隣で眠る彼が出てきてくれた事と、とても幸せな内容だった事だけは覚えていた。
けれど、やはり瞼が開きにくい。
原因はもちろん、眠る前に泣いたからだ。その原因か目の前の彼が全て引き受けてくれた。そして、慰めてくれたのだ。
今は寝ている間に離れてしまった手だが、寝る前はしっかりと握りしめてくれていた。きっと、その温かさがあったからこそ、ゆっくりと眠れたのだろう。
「………ありがとう、周くん」
彼を起こさないように小声でそう言うと、ゆっくりとベットから出た。
リビングに戻り時計を確認すると、まだ仕事に行くには十分余裕がある時間だった。
吹雪は、昨日話を聞いてくれた彼のために朝食を作ろうと思ったのだ。冷蔵庫の中にある少ない食材でしか作れないのが申し訳なかったけれど、それでも彼のために何かしたかった。
野菜を何種類か出して、調理を始まる。
吹雪は料理をしながら、彼の事を考えた。
周のために出来ること。それは、彼が望む事が1番だろうと思った。それは、ホストの接客の向上のために、練習に付き合う事。彼が吹雪に初めてお願いしたことだ。