アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
2話「甘い誘惑」
2話「甘い誘惑」
「ここって………ホストクラブだよね?」
吹雪は、周りをキョロキョロしながらその店先を見上げた。ゴールドで装飾された看板に、フワフワな黒のカーペットがひかれた店先。そして、男の人の写真がずらりと並んでいるのがわかった。
ホストクラブ。
お金で愛を買う、高級な遊び。
吹雪の中では、そんなイメージしかなかった。きっと、お金持ちのお姉さん達が男の子をはべらせて、上品にお酒を飲む。お金の代償に甘い接客と言葉と笑顔を貰うのだろう。
そんな華やかで優美な世界。だけど、本当は辛くて切ない恋を売る店。
そんな場所だと理解しているつもりでいたけれど、今の吹雪は何故かこの場所が気になってしまった。妙に惹かれるのだ。
一時でもいいから、誰かの特別になりたい。甘い言葉を囁かれて、自分は本当に必要とされていると感じたい。愛して欲しい。
漫画やドラマのような甘い恋愛をしてみたい。
そんな風に強く渇望しているのに、吹雪は改めて気づいた。
自分がそんなにも愛に飢えているのだと改めて知り、吹雪ひとり苦笑した。
「何事も経験だよね………もしかして、いい思い出になるかもしれなし。ハマらなせればいいんだわ」
やけくそな気持ちだったかもしれない。
けれど、それでも今の荒んだ気持ちを晴らすためには新しい刺激が必要だ。そう、吹雪は自分自身に言い聞かせながら、ホストクラブの花の装飾がついたドアノブに触れた。
「お姉さん、ホストクラブに興味があるの?」