アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
「わぁー……そのワンピース似合いますね」
「あ、ありがとう」
そこにシャワーを浴びて私服に着替えた周が戻ってきた。吹雪の服装を見て、キラキラした瞳で褒めてくれるので、吹雪は照れてしまう。彼がそうやって自分を褒めてくれるのには、別の理由があるのに。
「周くんは褒め上手になってきたね。さすがはホストさん」
「俺はホストだからじゃなく………」
「ほら、髪乾かしてきて、お出掛けしよう。早くしないとお昼になっちゃうよ」
「う、うん………」
吹雪は彼にドライヤーの場所を教えて彼との会話を無理矢理止めた。
今は彼の言葉に対する愚痴だったかもしれない。周もきっと嫌な思いをしたはずだ。
ブオォーーーとドライヤーの機械音が聞こえて来た。その音に紛れて、吹雪は「最低だな……素直に喜べないなんて、可愛くない女」と、自分への悪口を吐いたのだった。
周はおしゃれなパン屋さんを教えてくれた。コーヒーとパンをテイクアウトして、近くの公園で2人で遅い朝食をとった。
外で食べる朝ごはんはとても新鮮で、吹雪はいつもより美味しく感じられた。それは、パンが美味しいからなのか、彼と一緒なのか。きっと、どれも正解だろう。
2つ目のパンを口にしながら、吹雪は彼に問いかけた。