アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
「吹雪さん、探してたんだ。突然いなくなったから……。連絡もしたんだよ?どうしたの………?」
「………ごめん」
「それはいいんだ。体調悪くなったとか?………大丈夫?」
「周くん、もう帰って欲しいの。………一人にさせて」
「……ぇ………」
全く彼の顔を見ずにそう言うと、彼を無視して通り抜けた。すれ違い間際に、一瞬だけ彼の表情が見えたが、何故か彼がショックを受けた顔をしていたのだ。………こちらの方が傷ついたというのに。
吹雪は素早くバックから鍵を取り出して、鍵穴に差し込んだ。
「待って!!………どうしてそんな事言うの?俺の事も見てくれないよね?」
「…………」
「…………もしかして、柴田さんとの話しを聞いたの?」
周は吹雪の手を掴み、顔を覗き込んできた。それでも、吹雪は視線をそらしたままにした。すると、その様子を見ておかしいと思ったのだろう。周はしばらく考え込んだ後、柴田との会話を思い出したようだった。
「違う、あれは勘違いだ!俺は、そんなつもりなんて………」
焦ったように声を荒げて吹雪に説明しようとするが、吹雪はそれを拒否するかのように、首を横に振った。
「………じゃあ、私に嘘をついてる事はないの?」
「え…………」
「私に話してくれてない事は?どうして、私に声を掛けたの?ホストになるっていうのは本当だったの?」
「そ、それは…………」