アラサー女子は甘い言葉に騙されたい





   ☆☆☆





 『今日は帰ります。また、吹雪さんに会いにくるから。………本当にごめんなさい』



 このメッセージが届いたのはもう数週間も前だった。もう少しで、1ヶ月が経とうとしていた。

 何度このメッセージを眺めていただろう。
 けれど、吹雪から返事をする事はなかった。



 周と柴田の話しを聞いた時の衝撃は、思い出すだけで今でも苦しくなるほどだった。
 けれど、周と会えない日々は、それよりも、もっと辛かった。
 忘れなければ。そう思っているのに、フッと彼の事を思い出してしまうのだ。

 彼の笑顔と、繋いだ手の感触、抱きしめてなぐさめてくれた事やミステリアスな表情。全てが吹雪を思考を支配していた。


 「明日見さん、大丈夫?」
 「あ、はい!!」
 「最近ボーッとしてるわね?体調悪いの?」


 職場の同僚に心配されてしまい、吹雪は慌てて頭を横に振った。
 先程からボーッとしては手を止めてしまっていたのか、全く仕事が進んでいなかった。同僚に謝罪をし、吹雪は「大丈夫です」と返事をして、仕事に集中した。



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