恋に負けるとき
上がったボールと恋の行方の巻
体育の授業。
体育館で、男女ともバレー。
思いのたけを込めて打った
渋谷のスパイクが、鋭くコートに刺さる。
「バレー部が本気出すなよ。」
「誰も取れねえって」
「さてはお前、女子の皆さんに
キャーキャー言われるつもりだろ」
ツレのヤジも無視。
すっきりしねえ。
ぐちゃぐちゃの頭ん中。
あきらめないって思ったものの
もう、振られてしまったおれは
どう動いたらいいんだ?
…
ちくしょう。
スパイク打ちまくってやる。
ハアハア。
息が上がる。
体育館の壁にもたれて、座り込む。
「そりゃあんだけ打ち込んだら、
バテるだろ。
試合かと思ったわ」
友だちのタケが、笑っていう。
うつむいて、肩で息する渋谷のあごから
汗がポタン
一粒落ちる。
はあ。
顔を上げる。
いっぺんで、
女子の中から田所さんを
探し当ててしまう自分に
内心苦笑する。
おれ、こわ。
でも…田所さん。
こっち、見てた?
田所さんが、視線を外した。
おれだって
気づいたのかな?
2年になって、園芸委員じゃなくなった
田所さんは
もうあの花壇にはいない。
違うか。
ただ、目があっただけか。
何気なく見てたら、昨日振った男と目があって
気まずい。
みたいな?
はー、
きつ。
どうすりゃいいんだ。