恋に負けるとき
ザワッ。
クラスメイトの声に
何?
渋谷は顔を上げる。
みんなの視線の先に
田所さん。
え?
涙がこぼれるてる。
呆然としたような表情のまま
泣いている。
「あれ」
「どうしたの?大丈夫?」
友達の声に
「はは。なんだろ」
「大丈夫」
ごし。って
慌てて涙をぬぐうけど
田所さんの瞳から膨れ上がった雫は
ポロポロポロ。
とまらない。
涙をこらえようと
への字口になる口元。
「何でもないよ。」
泣きながら笑って
田所さんは
「ご、ごめん」
誰に謝ったのか
走って出て行く
…
…
沈黙の教室のなか。
タケが静かに、おれに言った。
「追いかけねぇの?」
「えっ?
おれ?
追いかけていいの?」
「お前しかいなくね」
俺は教室を飛び出した。