恋に負けるとき




息をきらして




彼女のかぼそい腕を



つかまえる。




階段を降り切った廊下の端で




ブンブン。



背中を向けたままの田所さんが首をふる。



「ごめん。



何でもないから




ほんと…私なんかほっといて」




小さな涙声。




「ムリ」




俺が言い切ると




田所さんがびっくりしたように



こっちを向いた。




「おれ、田所さんが何考えているのか、



全然わかんないよ。




なんで泣いているのか…



ほんとの気持ちが見えない。」



壁際に立つ田所さん。



俺と壁に挟まれて



まだ涙に濡れた瞳で俺を見上げる。



キミが好きで



頭おかしくなりそうなくらい




苦しい…




なのに、



それでも



好きなんだよ。




「好きか



キライかで



答えて」



だんだん



透明に光る瞳に



不器用に赤くなった鼻に



ゆっくりと



近づいていく





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