続・闇色のシンデレラ
「あ、俺これ食べたいなぁ。タルト好きなんですよね~。
憂雅はこれかな?モンブラン。
あいつ上のクリームだけ食べて残り食べないことがあるんですけど、ここのケーキだと全部食べるんですよ。
だから相当おいしいんだろうなって」



自分の失態を隠すように口達者になる。



「ふふ、凛ったらすっかり憂雅のお兄ちゃんって感じだね」

「ははっ、まったく生意気でかわいい弟ですよ」



よかった、壱華さんは笑ってくれた。

それほど精神的に応えてはいなかったみたいだ。

俺だって、家族や兄貴の話、掘り下げられたら嫌な気分になるもんな。

壱華さんも同じだ。嫌なこと聞かれて無理に答えるのはいろいろ思い出してつらい。

あんまりこの話題は出さないことにしておこう。



「……光冴はこれかな、ガトーショコラ」



そう思ったけど、話題を振ってきたのは壱華さんからだった。



「バレンタインにチョコもらいすぎて嫌いになりそう、なんて言ってたこともあるけど、わたしが作ったガトーショコラは食べてくれたことがあるんだよね。
だからなおさらお店のケーキなら、手作りよりおいしいし、食べてくれそう」

「……」



俺はそこで黙ってしまった。

見つめる壱華さんの横顔が、その唇が、うっすらと弧を描いて笑ったように見えたんだ。

この2人、もしかして本当は……。
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