続・闇色のシンデレラ
「そう、ですね。これにしますか」

「うん」



──本当は、関係を修復したいんじゃないかな。

元通り、とはいかない。

だけど、今の壱華さんと潮崎の若頭のような普通に接することのできる状態まで、戻したいんじゃないかな。

光冴さんが過去の加害者であるとしたら、潮崎の若は、理叶さんがもう一人の加害者なんだろう。

これは俺の憶測に過ぎない。

けれど。



「壱華さん」

「なに?」

「……光冴さんには、ご自分で渡しますか?」



今の壱華さんと理叶さんの関係は俺から見ても自然で良好だ。きっと何らかのきっかけでそうなったに違いない。

だからこそ光冴さんとも、ギクシャクした関係をなんとかしたいと思ってるんじゃないかな。

荒瀬に牙を剥くような、俺の愚かな行為を許した壱華さんならありえる話だ。



「うん、自分で渡すよ」



すると彼女は優しい顔でうなずいた。

その表情に迷いやためらいはなかった。

その後、壱華さんはひと通り注文をこなしケーキを購入した。

それから店を出る前に、彼女はぼそりと俺に囁いた。



「ありがとう、凛太郎」

「え?」

「伝わってきたよ、なんとなく」



……ということは俺は彼女の役に立てたんだろうか。

分からないけれど、小さな恩返しができたようなら、それで満足だ。

俺は一生をかけて、俺を救ってくれた彼女に恩を忘れてはならないのだから。
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