続・闇色のシンデレラ
その笑顔は胸が締め付けられるような悲しいものだった。

無理やり笑顔を作り心情を隠したように見えたけれども、嫌というほど彼の感情が伝わってきた。

いや、光冴は我慢はしても、それを隠すつもりはないんだろう。



「俺も覚えてるよ、全部。壱華ちゃんと話したことは俺にとってすごく大事な思い出なんだ」



一語一句、噛み締めるように話す光冴の瞳は潤んでいたから。



「初めて出会った時、壱華ちゃんは俺を警戒して一言も喋ってくれなかったね。
でも君は、俺の脈絡のない話も、一生懸命聞いてくれて……ああ、この子は優しい子だなって、話す度に思ったよ。
あの空間で、壱華ちゃんといることが楽しかった。どんな話だって、納得する言葉をくれる。
この子はなんでこんなにも健気で強いんだろうって、不思議だった」



わたしが彼にとって強い、というふうに見えていたのは驚きだった。

確かに、あの時は心の拠り所がなかったから気を張っていただけかもしれないけど。



「だからこそ、俺は焦っていたのかもしれない」

「……え?」

「壱華ちゃんがあの時、理叶を見ていたのは分かっていたから。
どうせ理叶のものになるのなら、壱華ちゃんに依存してはいけないって……」



驚いた、光冴は分かっていたんだ。当時わたしが理叶に憧れを抱いていたこと。



「ごめん、聞きたくないよな、こんな話──」

「いいよ、話して」



光冴は顔色をうかがって話をやめようとしたけれど、わたしはそれを許可しなかった。

罪に向き合いたいと考えるのなら、包み隠さず話すことも贖罪(しょくざい)だ。



「分かった」



こうしてついに、光冴は一年半に及ぶ長い沈黙を破った。
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