続・闇色のシンデレラ
「俺が実莉と付き合ったのは、壱華ちゃんを忘れたかったから。
壱華ちゃんは俺にとって遠い遠い存在だった。
どんな男にもそれを思わせてしまうほど、君は謎めいて儚げで、綺麗だった」



そう言うと光冴は視線を外し、窓辺に肘をついて、景色を眺めながら語り始めた。



「誰かに夢中になっているフリをすれば、壱華ちゃんを忘れるものだと思ってたんだ。
でも、違うんだ……心に大きな穴が空いていくだけで、何も満たされない。虚しいだけだった……」

「……」

「むしろ、苦しくなっていくだけで。そんな時……実莉は俺に囁いたんだ。
『助けて、壱華に殺されちゃう』って」

「え?」

「自分を壱華ちゃんに置き換えて、自分が今まで君にしてきたことを俺に話してきたんだ。
その内容は酷いものだった。同時に憧れてた人間が裏でそんなことをしていたなんて、俺は頭に血が上ってしまった」



……実莉はそうやって光冴を取り込んだのか。

もう関わらない人間とはいえ、心の醜さに腹が立つ。



「俺もダメだよなぁ……ずっと憧れてた壱華ちゃんを裏切って、あんな女を信じて。
あいつも、すぐに血が上る俺の性格を利用したんだろうな。
……自分のこういうところが嫌いだ。否が応でも“あいつの血”が流れてるんだって実感するから」

「……あいつの血って?」

「親父だよ」



訊くと光冴は躊躇いなく答えを口に出す。もう彼は隠し事はしないつもりらしい。



「俺は生まれたところから間違えたのかもなぁ……」



零れたその言葉には哀愁が漂っていた。
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