続・闇色のシンデレラ
「俺の父親は、憎しみの感情を持って俺を育てた。
それには一理ある。俺を産まなきゃ母親は死んでなかったんだから」

「どういうこと?」

「親父は元々キレやすい人間でさ、それを母親が抑えてくれてたんだって。これは親父が傷害で手錠(ワッパ)にかけられた後、親戚から聞いた話だけど。
で、俺を産んだことが原因で母親が死んだ。
親父は母親が死んだ要因である俺をひどく憎んだ。
だから殺さない程度に、痛めつけことを考えたんだってさ」



わたしはここで初めて、光冴が思い出したくない過去を背負っていることを知ったのだ。




「虐待ってやつだよ……暴力だけなら、壱華ちゃんよりひどかったかもしれない」



笑う光冴の表情には力がなかった。



「これとか、処置のしようがないってさ」

「……!」



光冴は左側に立つわたしに見えるように服をめくる。

(あらわ)になったのは、腰のあたりが一部黒ずんだでこぼこの背中。

これはタバコの火を押し付けられた跡……?

6歳から父親と離れているのに跡が残っているなんて……長い期間に渡って何度も何度も虐待された証だ。


わたしは知っている。

ここまでされていても、誰にも相談出来ないこと。

逃げる場所がないから我慢するしかなかったんだということ。



「気持ち悪いもの見せちゃったね、ごめん。忘れてよ」

「……誤魔化さないで」



知っているから余計、光冴の場をつくろおうとする言葉に反発してしまった。
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