続・闇色のシンデレラ
「それは気持ちの悪いものじゃない。そして自分から人に見せるものでもない。
光冴は分かっていたはず。それを見て、わたしがどう思うか」

「……なんでもお見通しだなぁ。そうだよ、同情がほしかったわけじゃない。
これを見て、俺はまとめに育ててもらえなかった被害者だから、壱華ちゃんに危害を加えてしまったと、言い訳として捉えてほしかったわけでもない。
ただ、分かるだろうなって」



そう言った光冴の横顔はここではない遠くをみつめているようだ。




「まともな人生を送れなかった。
だからこそ人との繋がりが最も恐ろしいんだって。
いつ裏切られ落胆するのか分からないから、そういう奴は攻撃的になるか守備的になるかのどちらかだ」

「……」

「愛情が一番必要な時に与えられなかった。
だから信頼ができない。今、ここにある居場所も、いつか壊れていくのだろうかと怯えながら生きていく、こんな考えをやめられない」




ひどく身に沁みて共感できる意見だった。

それは同じような境遇の人にしか分からないことだろう。

わたしにとって一番の理解者である志勇にも、光冴にとって親友の理叶でも分からない考えだ。

つまりわたしたちはよく似ている。

ただ、わたしは自分を守るために押し黙り守備的になり、彼は自分を守るために危害を加える者に拳を向けたのだ。

あの悪夢は、そんな人間がお互いの腹の中を探ることができず引き起こされた悲劇と言っても間違いではない。
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