続・闇色のシンデレラ
「え……」

光冴は硬直し目を見張る。

わたしはその瞳を見つめ返した。



「そうやって、自分を犠牲にしようとしないで。
この世界がどれだけ危険だからって、それだけは許さない」



光冴から感じ取ってしまったんだ。

この男は私のためなら、簡単に命を投げ出すことをためらわないんだと。



「似たような境遇だから、自暴自棄になるのは痛いほど分かる。
だけど自己犠牲で人を守ろうと思わないで。
わたしのせいで、目の前で血を流して人が倒れる。
もうあんな光景は見たくない」

「ごめん……俺、そんなつもりじゃ……」



その反応をするってことは、やっぱり無意識だったか。

志勇に散々言われたことを思い返して彼と重ねる。

彼は無意識に、自分を無下にしてしまっているのだと。

同時にわたしも未だその意識が拭えていないのだと。



「……光冴は理叶によく似てるね」



それを踏まえた上で、話の視点を変えることにした。



「まさか2人に同じようなことを言うと思わなかった。
……罪を償いたいのなら、わたしに許しを乞うこともしないくせに、勝手に死ぬなんて許さない」

「っ……」

「これはまだ西に攫われて大阪にいたころ、わたしが理叶に言った言葉。
これが心に響くのなら、光冴はどこかで死んでもいい、なんて思ってたのかもね」

「……」

「わたしが言いたかったのはそこじゃないの。光冴が迷って考えて、あえてわたしに謝らなかったのは分かってるから」



ふと、風が吹き始めた。生ぬるい夏の風、わたしはそれを受けながら、体ごと光冴と向かい合った。
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