続・闇色のシンデレラ
「なんだよ力、その慌てようは」

「なんでもないです!なんでも、ないんです!」

「お前昔から隠し事あるとボキャブラリー貧相になるよな」

「うっ……」



玄関を右に曲がった奥で彼らを見つけた。

不運なことに、どうやら力さんはだる絡みする若頭に鉢合わせてしまったようだ。

半笑いの志勇に力さんはたじたじ。

力さんには可愛そうだけど、他人をいじるってことはそれだけ志勇の気分が優れてるってことだ。




「志勇、おかえり」



少し遠くから声をかけると志勇は素早く反応してわたしを見つける。

するとその顔はみるみる笑顔に。無邪気で少年のような満面の笑みを浮かべた。

それだけ嬉しいんだ、なんか可愛いなぁ。



「ただいま、壱華」



歩み寄ると志勇はわたしを正面から抱きしめる。



「ずいぶんご機嫌だね」

「ん?そりゃ、やっと嫁に会えたんだから機嫌もよくなる」

「でもだからってあんまり力さんをいじめないでね?」

「いじめてねえ。可愛がってやってんだ」



志勇は向こうにいる力さんを見ると笑顔のまま鼻唄まで歌っている。ここまでご機嫌な志勇は珍しい。

何かいいことあったのかな、と考えていると、彼はわたしと視線を絡めた。
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