続・闇色のシンデレラ
「悪い」

「え?」

「嫌な記憶を思い出させちまったと思って」

「気にしないで。そういうつもりで言ったんじゃないから」



わたしのケロッとした態度に志勇はほっとしたようにため息をついて、そして自分の息子へ視線を向けた。



「……絆は優しい子に育ったな」

「まだ分かんないよ?志勇みたいな暴君に育っちゃうかも」

「いいや、絆はいい子だ。
俺が危惧してたのはサイコパスの素質があるかどうかだ。
そういう奴は幼少期から人と違うからな。
俺はそれに該当する人間をひとり知ってるから、尚更絆が普通で安心した」



確かに、絆は母親のわたしから見てもお利口さんだと思う。

いろんな人に協力してもらって愛情いっぱいに育ったおかげもあるんだろうけど、子どもらしくてかわいい子だ。



「サイコパスって……心配しすぎだよ、志勇」

「そう思うだろう?だが極道の世界に生きていると、たまに見かけるんだ。
生まれ持って凶悪性を秘めてる人間を」

「……それって、わたしも知ってる人?」



志勇は大きく目を見開いた。

図星なんだ。しまった、こんな顔させるくらいなら言わなきゃ良かった。

そう思って違う話題に変換しようとした時───



「ままぁ!みて〜!」



無邪気な絆の声に自然と注目が移った。
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