エレベーター
3階まで作られていたのは、生徒の運動能力を戻す理由もあったようだ。


といっても、いつでも元気なわけじゃない。


あたしたちだって風邪を引けば階段を上がるのがしんどくなる。


そういうことまで考慮して、エレベーターも設置されていたのだろう。


「エレベーターを使っていた頃、なにか変ったことはなかったんですか? たとえば、エレベーターがひとりでに動き出したりとか……」


そう聞いてから、しまった、と顔をしかめた。


課題で話を聞きに来ているのに、突然オカルトじみた話をすると怪しまれるかもしれない。


そう思ったが、清田先生は笑い声を上げてくれた。


「そんなことは1度だってないよ。最近ではそういう噂が出てるみたいだけどね」


「そうですか……」


少しだけ落胆した気分だった。


当時はエレベーターでの怪奇現象は起こっていなかったのだ。


となると、使われなくなってから噂が流れ始めたのだろう。


使われないエレベーターは薄気味悪いから、どんな噂が立ってもおかしくなかった。


でもそれでは解決しないのだ。


現実になにか起こっていないかわからないと……。
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