エレベーター
毎回、そうだった。


見えない力が生じていることは確実だ。


「美知佳は早く学校から出るんだ。一穂と充弘も一緒に」


「嫌だよ。あたしは幸生と一緒にここにいる!」


一穂が幸生の腕を掴んでそう言った。


好きな人を危険な目にあわせたくないのだ。


「俺なら大丈夫だから。それに、美知佳が言っているとおり俺じゃダメかもしれない」


その可能性は高かった。


「そうだよ一穂。あたしは外へ出ていたって、きっと気が付けば別世界の教室に飛ばされる」


そう言いながら背筋が寒くなった。


今日はどんな恐怖を味わうことになるのか、想像しただけで心臓が壊れてしまいそうだ。


それでも、幸生はここまで言ってくれているのだ。


本気でエレベーターの怪奇現象を止めようとしてくれている。


「行こう、美知佳」


充弘があたしの手腕を掴んで歩き出した。


痛いくらいに捕まれた手腕は、絶対にあたしを離さないと言う強い意思を感じられた。


「一穂」


まだ幸生から離れられない一穂に声をかけ、あたしたち3人は教室を出たのだった。
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