エレベーター
☆☆☆

外から見上げる校舎は徐々にオレンジ色に染まりはじめていた。


グラウンドからは部活動をする声が聞こえて来るし、校舎内からも生徒たちの話声が聞こえてきている。


今のところ変化は見られなかった。


「充弘は部活に出なくていいの?」


グラウンドでは野球部の声も聞こえてきていた。


「あぁ。もともとそんなに上手くないしな。練習にでなくても起こられない」


充弘はそう言って苦笑いを浮かべた。


「あたしのせいで練習できてないんじゃないの?」


「関係ないよ。上手くないのに女子たちに騒がれて、部活仲間たちも迷惑がってたのを知ってたんだ」


充弘はそう言ってグラウンドへ視線を向けた。


部活動に励む生徒たちの熱い汗が、ここまで香ってきそうだった。


充弘がここにいるのに、部活に参加するよう声をかけてくる生徒がいないということは、最初からなにか問題を抱えていたのかもしれない。


そう考えたあたしはこの話を打ち切りにした。
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