エレベーター
「エレベーターの中ならもう確認した」


その言葉にあたしは「え?」と、眉を寄せた。


「お前たちが大黒を見つけた場所がエレベーターの前だったから、念のためにな」


「それなら!」


「中にはなにもなかった」


先生の言葉にあたしは目を見開いて絶句した。


一穂と充弘も唖然としている。


「そ、そんなはずありません!」


一穂が叫ぶようにそう言った。


あたしたちは間違いなく見たのだ。


幸生を引きずり込んだエレベーターが、上下に激しく動いたところを。


そして、血まみれになって倒れている幸生の姿を……。


「エレベーターの扉は念のためにもう1度溶接し直したけど、本当に中にはなにもなかった。お前ら、一体なにを隠してる?」


それはまるで犯人を探るような言葉だった。


先生はあたしたちが幸生に暴力を加えたと思っているのだろう。


そんなこと、するわけがないのに……!
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