エレベーター
重苦しい沈黙があたしたちを包み込んだ時、ふいに一穂が立ち上がった。


あたしが止める暇もなく、悲鳴のような声をあげながら応接室から駆け出した。


「一穂!」


慌てて追いかけようとするあたしの手を、充弘が掴んだ。


「今は、そっとしておいてやれ」


充弘はジッと先生を睨み付けて、そう言ったのだった。
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