エレベーター
☆☆☆

エレベーターの扉の前には立ち入り禁止の立て看板が設置されていた。


扉に触れられないようにロープまではられている。


それを見ているだけで気分が悪くなってきそうで、あたしはすぐに視線を逸らせた。


先生はエレベーターの中には何もなかったと言っていたけれど、本当だろうか?


じゃあ、あたしたちが見たものはなんだったんだろうか?


色々な疑問が浮かんでは消えて行く。


「どうして、幸生の時はあんなことになったんだろうな」


ボソッと呟くように言ったのは充弘だった。


「え?」


「ほら、美知佳の時はあんな風にはなってないだろ? 美知佳自身が血を流すようなことは、今まで1度もない」


「そういえばそうだよね」


あのエレベーターの中に引きずり込まれても、電気が点滅して人影が見えるだけだった。


だけど今回は最初からエレベーターに乗った人間を殺そうとしていたようにも見える。
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