エレベーター
あたしは何度も何度も開くボタンを連打した。


いつも扉が開く3階のボタンも、同様に押す。


しかしエレベーターは機能してくれず、すべては影の赴くままに動いているのだ。


あたしにできることはひたすら恐怖を我慢することだけだった。


影が時折、うぅぅぅぅ……と、低く苦し気なうめき声を上げる。


その声を聞くとなぜかあたしの胸が押しつぶされてしまいそうなほど苦しくなった。


まるで、影の悲しみ、憎しみが全部あたしの中に入ってきているような感覚だ。


唸り声を聞きたくなくて、両手で自分の耳を塞ぎ、影から逃げるように目をキツク閉じた。


そうすることで、少しでも恐怖を遠ざけたかったんだ。


でも……。


そうして逃げることも許さないというように、影の手があたしの足に触れた。


その瞬間弾かれたように目を開けた。


今まであたしに触れることのなかった影の手が、今あたしの右足をしっかりと掴んでいるのだ。


「イヤアアアアアアアア!!」


自分の鼓膜さえ破れてしまいそうなほどの悲鳴が出た。
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