エレベーター
☆☆☆

やはり、あのエレベーターで以前なにかがあったのだ。


障害者だからという理由ではなく、強い怨念が残ってしまうような出来事があったのだ。


あたしはそう確信していた。


エレベーター内での出来事を一穂と充弘に説明すると、2人は深刻な表情で黙り込んでしまった。


なにが起こったのかわからなければ、対処のしようがないからだろう。


「もう1度、清田先生に話を聞こう」


1階まで下りてからあたしは2人へ向けてそう言った。


「今すぐにか? 事務の先生は今日は休みだろ?」


充弘が心配そうな表情をあたしへ向けて言った。


「行ってみないとわからないじゃん」


あたしは少しフラつきながらもしっかりと両足を踏んばって前へ進んだ。


「今日はやめておこうよ」


一穂があたしの肩を叩いて言う。


だけど、辞める気はなかった。


休日だろうが平日だろうが、あたしはまたエレベーターに引きずり込まれるのだ。


きっと明日も、明後日も。


それならボーっとしている暇はなかった。
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