エレベーター
「光弘、ずっとビデオ通話で見てたよね?」


「あぁ、見てたよ。美知佳がSOSのボタンを押して通話するところを」


「それだよ!!」


あたしはつい大きな声を張り上げていた。


引っかかっていたのはSOSのボタンだ。


あたしはエレベーターの中で倒れていたけれど、元々低い位置に設置されていたから、手を伸ばしたら届いたのだ。


「咲子さんはどうしてボタンを押さなかったの?」


あたしの言葉に充弘が「あ……」と、小さく呟いた。


SOSボタンを押せば咲子さんは助かっていたかもしれないのだ。


でも、資料にも咲子さんの母親の話からも、そのようなことは出てこなかった。
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