エレベーター
☆☆☆

翌日、連絡網でエレベーターの前で不審な男性が死んでいたと連絡を受けることになった。


それは間違いなく前原だったが、あたしはなにも知らないフリをした。


夜の学校に勝手に入り込んで何かの事件に巻き込まれたのだろうという、憶測だけが飛び交っているようだ。


しかし、昇降口はもちろん窓もしっかり施錠された校舎にどうやって侵入したのか、わからないことだらけのようだ。


「幸生、目が覚めたらしいな」


落ち着いて学校へ通えるようになった日のこと、一緒に登校していた充弘がそう言った。


「本当に!?」


「あぁ。昨日連絡がきた」


「そっか、よかったぁ」


あたしは大きく息を吐きだして言った。


これで最後の気がかりもなくなったわけだ。


でも、残念だけどあれ以来一穂とは会っていなかった。


学校にも来ないし、電話にも出ない、メッセージに既読がつくこともなかった。
< 218 / 221 >

この作品をシェア

pagetop