エレベーター
でも、それももう終わる。


全部が元通りだ。


校門前まで来たとき、不意に充弘が立ち止まった。


「どうしたの?」


そう聞いて前方へ視線を向けると、そこには青白い顔をした一穂が立っていた。


随分痩せているし汚れた服を着ているから、一見して一穂だとわからないくらいだ。


「一穂……」


「ごめんね」


一穂が小さな声で呟いた。


「え?」


「被害届……」


「あぁ……うん。友達だもん」


あたしは頷いた。


一穂はあの時拘束されて警察に突き出されたが、あたしたちは被害届を出さなかったのだ。
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