エレベーター
「なんで開かないの!? さっきは開いたじゃん!」


悲鳴に近い声をあげると、箱の中にこだまして自分の耳に戻って来る。


それはまるで、あたしをあざ笑っているかのように感じられた。


『落ち着いて美知佳。外からもボタンを押してみてるけど、なんの反応もないみたい』


一穂の声だ。


なんの反応もないなんて、そんなわけない。


それじゃどうやってこのエレベーターは1階までやってきて、扉が開いたのか説明がつかない。


「お願い、誰か助けて……!」


壁に拳を打ちつけた時だった。


グィーン……。


あの音が箱の中で聞こえ、かと思うとエレベーターが動き始めたのだ。


あたしは息を飲んで壁に背中を張り付けた。


エレベーターは微かな機械音と共に上昇しているのがわかった。


数字のボタンなんて押してないのに……。
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