エレベーター
「今日も同じことが起こるなんてな……」


幸生がさすがに青ざめた顔で呟いた。


「そうだよね。今日は肝試しなんてする気はなかったのに、どうしてこんなことになったんだろう」


一穂もさっきから顔色が悪い。


あたしは大きく息を吸い込んだ。


「きっと、あたしが1人になっちゃったときから始まってたんだよ」


「どういう意味だ?」


充弘の問いかけに、あたしは自分の体を抱きしめた。


「忘れ物を取りに戻った日。あの時からなにかに狙われるようになったんだと思う」


そうとしか考えられなかった。


もしかしたらその後面白半分で肝試しをしてしまったことも関係あるのかもしれないが、怪奇現象そのものは最初から始まっていたのだ。


「狙われるって、幽霊にか?」


「わからない。でもエレベーターの中にいる、誰か」


あたしは幸生からの質問に早口で答えた。
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